日常生活の中にある、建築的風景②

|近所に見る有名建築の謎

はじめまして。アーレックスで設計を担当している大杉です。
毎日を心地よく、素敵な空間で過ごしていただくために、私は世の中にある素晴らしい建築、隠れた魅力を感じる建物などを数多く観ています。そして、それらに刺激を受けながら、もっと良い家を!と様々なトライをしています。
そんな1人の建築家が、どんな視線で街や日常の暮らしを見ているか。感じたこと、思ったことを中心に、あまりかたくならずにお話していきたいと思います。
第1回目は近所で見ることができる有名建築の謎について。

アーキテクト、建築をめざす方、建築家の方々が必ず行うツアーがあります。
「安藤忠雄ツアー」。安藤忠雄とは言わずと知れた日本屈指の建築家で、安藤氏の作品は日本全国、世界各国まで広がります。

私もいくつかのツアーを企画したり、参加をしてきました。しかし、ここでお話したいのは安藤忠雄のどんな作品が良いとか、これは外せない、とかではありません。ツアーで観たものの中に代表作の一つである「住吉の長屋」がありますが、それを身近な場所でごく簡単に「観ることができる」って言ったらすごくないですか?

安藤忠雄氏の「住吉の長屋」
「住吉の長屋」にそっくりですね!

これどうですか?似てません?似てますよね!建物の間口や入口の廻りなどがほぼ同じ寸法で出来ています。
おそらくこの建物を設計した方や工務店の方は、安藤氏の「住吉の長屋」を意識したとは考えられません。
では、なぜ似てくるのか?
それは、設計する上でとても大切な要因が似ているからではないかと思います。
設計を行うために重要なことはいくつもありますが、その中でも「場の環境」と「敷地の特性」、この二つの要因が似ているのだと思います。

・隣地の建物に囲まれた敷地
・アプローチは前面道路のみ
・間口が狭く 奥に長い
と写真から読み取るだけで、これらが類似していることに気づきます。
ある一定の要因が近くなると、それらから生まれる建物(間取り等)は似てくることは避けられないのです。

そう考えると近所の住宅を見ても、そこに付いている窓を見るだけで、ここがリビングでここがキッチン、きっとここがトイレでお風呂だね、というようにその家の間取りが見えてきます。
あー恐ろしい!設計者は、その中で施主希望と自分の思い描く理想の住まいの形を、模索していくのです。

きっと、あなたの住んでいる町の近くにも、第二の「住吉の長屋」があるに違いありません。
もし見かけたときは、どうか「似ているね」「そっくりだね」だけではなく、葛藤する設計者の気持ちを考えていただければ、彼らは救われるのではないでしょうか。


大杉 将

いつもの街にも旅先の町にも、目がとまり、心ひかれる建物が必ずあります。なぜときめくのか。そのワケなどをお伝えしたいと思います。

○プロフィール

2012年アーレックス一級建築士事務所に入社。美術館や日本の歴史的建造物を見てまわり、現代住宅にその想いを取り入れる。既成概念にとらわれない空間づくりで、個性的な住まいを提案し続ける。